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住宅の購入を検討するとき、間取りや価格と同じくらい大切なのが「災害リスクの確認」です。近年、大雨による洪水や土砂災害、地震・津波の被害が各地で相次いでおり、家族と大切な資産を守るための備えがより重要になっています。この記事では、住宅購入時のハザードマップの見方・調べ方から、リスクを踏まえた物件選びの考え方まで、初めての方にもわかりやすく解説します。

住宅購入において、ハザードマップは「購入可否を決める絶対的な基準」ではなく、「リスクを正しく理解して判断するためのツール」です。色が塗られているエリアも、適切な対策を前提に安心して暮らせる場合があります。以下では、正しい判断のための基本的な考え方を整理します。
ハザードマップに色が付いているエリアは、一定の災害リスクがあることを示しますが、「住んではいけない」という意味ではありません。たとえば、浸水想定区域であっても、浸水の深さが0.5m未満の区域であれば、2階建て住宅への垂直避難で命を守れるケースがほとんどです。
実際、日本の住宅地の多くはなんらかの形でハザードマップの対象区域に含まれており、「色が塗られていない土地だけを選ぶ」のは現実的に難しい場合もあります。大切なのは、どの種類のリスクが、どの程度の規模で存在するのかを正確に把握し、自分たちのライフスタイルや避難計画と照らし合わせて判断することです。
ハザードマップはあくまで「リスクの可視化ツール」。色の有無ではなく、色の種類・濃さ・範囲を読み解く力が、賢い住宅選びにつながります。
住宅のハザードマップ確認は、以下の3ステップで進めると整理しやすくなります。
1. 複数の災害種別を確認する 洪水・内水・土砂・地震・津波など、ひとつのマップだけでなく複数の災害リスクを重ねて確認しましょう。 2. リスクの「深刻度」を読み取る 浸水想定区域であれば浸水深、土砂災害であれば特別警戒区域(レッドゾーン)か警戒区域(イエローゾーン)かを区別することが重要です。 3. 避難のしやすさと対策のしやすさを評価する 近くに高台や避難所があるか、2階以上への垂直避難が可能かなど、実際の避難行動をイメージして判断しましょう。
この3ステップを踏むことで、「なんとなく不安」から「根拠のある判断」へと変えられます。
ハザードマップの確認は、契約直前ではなく、物件探しのできるだけ早い段階で行うことを強くおすすめします。
理由は明確です。購入申し込みや住宅ローン審査が進んだ後でリスクを知っても、心理的・経済的に「引き返しにくい」状況に陥りやすいからです。「もう申し込んでしまったから」「ローンの審査が通ったから」という気持ちが、冷静な判断を妨げてしまうことがあります。
たとえば、候補エリアを絞り込む段階や現地見学の予約前に、国土交通省の「重ねるハザードマップ」で該当地番を確認する習慣をつけると、後悔のない住宅選びに近づけます。物件探しの初期段階からハザードマップを「判断材料のひとつ」として取り入れましょう。

ハザードマップは、特別な知識がなくてもオンラインで簡単に確認できます。調べ方と、実際に見るべきポイントを具体的に押さえておきましょう。
ハザードマップの確認には、主に2つの方法があります。
① 国土交通省「重ねるハザードマップ(ハザードマップポータルサイト)」 https://disaportal.gsi.go.jp/ にアクセスし、調べたい住所を入力するだけで、洪水・土砂災害・津波・高潮など複数の災害リスクを地図上で一括確認できます。「重ねる」機能を使えば、複数リスクの重複も一目でわかります。
② 各自治体が発行するハザードマップ 市区町村のホームページや窓口で配布されている冊子型のハザードマップは、避難所の場所や避難経路など、より地域密着の情報が掲載されています。国土交通省のポータルと合わせて確認するのが理想的です。
所要時間は慣れれば3〜5分程度。住宅購入前の必須チェックとして、ぜひ習慣にしてみてください。
ハザードマップで確認すべき主なリスクは以下の4種類です。
| リスク種別 | 主な原因 | 特に注意すべきエリア |
|---|---|---|
| 洪水 | 河川の氾濫 | 川沿い・低地 |
| 内水氾濫 | 排水処理の限界による浸水 | 市街地・地下が低い地域 |
| 土砂災害 | 大雨による崖崩れ・土石流 | 山間部・急傾斜地周辺 |
| 高潮 | 台風による海面上昇 | 沿岸・海に近い低地 |
内水氾濫は「洪水がなくても起こる」浸水で、都市部でも多発しています。また、地震リスクを調べたい場合は「地震動予測地図」や「液状化危険度マップ」もあわせて確認しておきましょう。
洪水ハザードマップでは、浸水想定区域が色の濃淡で表示されています。国土交通省の標準では0.5m・3m・5m・10m・20mを境界とした6段階が推奨されていますが、使用される色は自治体によって異なります(黄色・ピンク系・青系など)。一般的な浸水深ごとの目安は以下のとおりです。
色が濃いほど浸水深が大きく、避難の難易度も高くなります。「浸水深3m以上」のエリアでは、色の違いに関わらず浸水深の数値を基準に、建物の構造なども踏まえたうえで早期避難を心がけることが大切です。住宅のハザードマップを確認する際は、お住まいの自治体が公表しているマップで色と浸水深の対応を確かめながら、最寄りの避難所への経路もあわせてチェックしてみてください。

検討中の物件がハザードマップの指定区域に含まれていた場合、すぐに諦める必要はありません。リスクの「種類」と「深刻度」を冷静に見極め、対策の余地があるかどうかを判断することが大切です。
土砂災害のハザードマップには、警戒区域(イエローゾーン)と特別警戒区域(レッドゾーン)の2種類があります。特に注意が必要なのはレッドゾーンです。
レッドゾーンは「土砂災害が発生した場合に、建物に損壊が生じ生命または身体に著しい危害が生ずるおそれがある区域」(土砂災害防止法)として指定されており、住宅を新たに建築することへの制限もかかります。浸水リスクとは異なり、建物そのものが崩壊する危険性があるため、ここに含まれる物件は原則として避けることを強くおすすめします。
一方のイエローゾーンは「土砂災害が発生するおそれがある」区域であり、早期避難を前提に生活できる可能性はあります。ただしどちらも、購入前に現地の地形や傾斜の状況を目視で確認することが重要です。
物件が浸水想定区域に含まれていても、浸水深や建物構造によっては安全に暮らせる可能性があります。判断のポイントは「垂直避難が有効かどうか」です。
浸水深が3m未満の区域であれば、2階以上への垂直避難で命を守れる可能性が高いといえます。逆に、3m以上の浸水が想定される区域や平屋住宅の場合は、垂直避難だけでは不十分なため、近隣の避難所へのアクセスが確保できるかを確認する必要があります。
また、浸水しやすい地域では「浸水対策済みの住宅」かどうかも重要なチェックポイントです。基礎高を上げた設計、止水板の設置、電気設備の2階配置など、ハード面の対策が施された物件かどうかを販売会社や施工会社に確認してみましょう。
ハザードマップの指定区域内にある物件は、資産価値や将来の売却に影響する可能性があります。
近年、不動産取引においても「水害リスクの高い物件」の価格が下落傾向にあることが、国土交通省の研究でも報告されています。特に大規模な水害被害が発生した地域では、その後の地価が顕著に下がるケースもあります。
ただし、資産価値への影響は立地・利便性・建物品質などの他の要素とのバランスによって大きく変わります。駅近・利便性が高い・ハザードリスクが比較的低めという物件であれば、長期的な価値を保ちやすい傾向があります。
「住み続ける家」として購入するのか、「資産として売却も視野に入れる」のかによって判断軸が異なるため、購入目的を明確にした上でリスクを評価することをおすすめします。

不動産売買の契約前には、宅地建物取引士による「重要事項説明」が行われます。この説明の中でハザードマップがどのように扱われるのかを理解しておくと、契約時の確認をより確実に行えます。
2020年8月に宅地建物取引業法の施行規則が改正され、不動産売買の重要事項説明において「水害ハザードマップ」の説明が義務化されました。具体的には、対象物件がハザードマップ上のどの位置に存在するかを、宅地建物取引士が書面で示して説明することが求められています。
これにより、購入者は契約前に必ず水害リスクに関する情報を受け取ることができます。ただし、説明を「聞く」だけでなく、自分でも地図を見て確認する姿勢が大切です。説明を受ける際は「浸水深は何メートルですか?」「避難所はどこですか?」など、具体的な質問を遠慮なく不動産会社に投げかけましょう。
重要事項説明で義務化されているのは「水害ハザードマップ」(洪水・内水・高潮)のみであり、土砂災害・地震動・液状化などのリスクは対象外となっています(2024年時点)。
つまり、重要事項説明を受けただけでは、すべての災害リスクを把握できるわけではないのです。特に、山沿いや丘陵地の物件では土砂災害リスク、埋立地や旧河道に近い土地では液状化リスクが潜んでいる場合があります。
前述の「重ねるハザードマップ」を使えば、これらのリスクも自分で調べることが可能です。義務として説明されるものを「最低限の情報」として捉え、自分でも積極的に調べる習慣をつけることが、安全な住まい選びの第一歩となります。
ハザードマップの読み取りに不安がある場合や、リスクをどう判断すべきか迷う場合は、経験豊富な不動産会社に率直に相談することをおすすめします。
信頼できる不動産会社は、ハザードマップの情報だけでなく、周辺の過去の浸水歴・地盤データ・土地の履歴(旧地名や地形変遷)など、地域に根ざした知見を持っています。「この土地は〇〇の理由で比較的安心です」「この点については注意が必要です」という具体的なアドバイスをもらえる会社かどうかも、不動産会社を選ぶ際の大切な基準のひとつです。
住宅は人生で最も大きな買い物のひとつ。災害リスクの確認においても、プロのサポートを積極的に活用してみてください。

住宅購入とハザードマップについて、重要なポイントをまとめます。
家族の安全と大切な資産を守るために、ハザードマップを「住まい選びの必須ツール」として積極的に活用してみてください。

国土交通省の「重ねるハザードマップ(ハザードマップポータルサイト)」で無料で確認できます。住所を入力するだけで、洪水・土砂・津波・高潮など複数の災害リスクを地図上で一括表示できます。各市区町村のホームページや窓口でも、冊子型のハザードマップを無料で入手できます。
必ずしも購入不可ではありません。重要なのはリスクの「種類」と「深刻度」です。土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は原則として避けることをおすすめしますが、浸水想定区域であっても浸水深が浅く、垂直避難が可能な条件であれば安全に暮らせる場合があります。ハザードマップを活用しつつ、不動産会社にも相談の上で総合的に判断してください。
重要事項説明で義務化されているのは「水害ハザードマップ」の説明のみで、土砂災害・地震動・液状化などのリスクは含まれていません。説明を受けた情報をベースにしながら、国土交通省のポータルサイトや自治体の情報も自分で確認することをおすすめします。
影響する可能性があります。特に大規模水害が発生した地域や、土砂災害リスクが高い地域では地価・物件価格が下落傾向にあることが報告されています。ただし、立地の利便性や建物品質との兼ね合いで変わるため、資産価値と安全性の両面から検討することが大切です。
はい、調べられます。国土交通省の「重ねるハザードマップ」では「地震動」や「液状化」のリスクも確認できます。また、国立研究開発法人防災科学技術研究所が公開している「J-SHIS(地震ハザードステーション)」では、より詳細な地震動予測地図を確認することが可能です。